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「はい、泳げません」

『はい、泳げません』 高橋秀実著 新潮社 本体1200円(税別)
文芸春秋社「Number」のブックレビューで紹介記事を見た。
全く泳げない人が書いた水泳挑戦ルポ、のようだ。
これは買わねば、と思った。理由はふたつ。
ひとつは「僕自身、泳げないから」。
水中歩行が腰に良いと聞き、ヘルニアを患った身としては嬉しくなって公営プールへ。
水中歩行者レーンをじょばじょば水を切って歩いていると隣をスイスイ泳ぐ人がいた。
かっこよかった。無駄を削ぎ落とした美しさが見事だった。きれいだなあと見とれた。
あまりにもぽーっと見とれていたので「スイスイ」の女性に睨まれてしまったが、
それは本来「スイスイの彼女」が悪いのである。
「彼女」の泳ぎが美しすぎる。そして水着が「リオのカーニバル」なのも反則じゃないか。
プールで眼鏡は禁止、視力は裸眼で0.1以下加えて乱視。
そんな目の悪い僕でもわかる「リオのカーニバル」な彼女が全て悪い。←確定
何ならいっそスクール水着かなんかで泳いでいれば問題はないのだ(ないのか?)。
で、まあ、何だ。泳げるようになりたいなあ、と思っていたのでこの本は「渡りに舟」。
そして理由ふたつ目「泳げない人が書いた本である」。
中学1年のとき、4歳下の弟の宿題を見てあげたことがあった。
科目は算数。小学3年生の算数なので、「わからない」ということはなかった。
ということでドンドコドンドコ立て板に水の如く解説を加え、指導にも熱が入った。
で、練習問題をやらせてみると出来が悪い。
確認してみると弟は僕が教えたことを殆ど理解していなかったのだ。
で、当時12歳の僕は「何で分からないんだ!」完全にぶち切れ兄弟ゲンカに発展、
以来我が家では「勉強は自分自身で頑張るもの」という暗黙のルールが出来た。
後で思い返してみると、当時の僕はなまじ「小3の算数」が分かっているだけに
「教える」というよりも「知っていることをひけらかす」方向に傾いてしまい、
教えられる側の理解度などは意に介さず、教える側の立場でしかモノを見なかった。
そして終いには『何で分からないんだ!』となるのだが、
こういうパターンは大人になってからの方が多いような気がしてならない。
むしろ世の中では「わからないサイド」から満足できる指導や教本には
奇跡的な確率でしか巡り合えないのが通り相場になっているように思える。
そんななかで「まるで泳げない人が書いた」というのは貴重だ。

で、一気に読みました。次の休みにはプールに行こうと思います。
泳げるかな。でも何とかなるような気もする。思い込みかな。それでもいいや。

by urutimai1970 | 2005-08-08 21:20 | 徒然