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5年ぶりに

高崎のもてなし広場で物乞いに遭いました。



細かい雨の降りしきる夜、『彼』は僕に話しかけてきたのです。
『いやあ、寒いやねェ』
その人懐っこい笑顔に思わず僕も返事していました。
「寒いっすねー」
『こういう寒い日ってのはあったかい○○○が◎◎◎で・・・』
『彼』は上機嫌でまくし立ててくるのですが、残念ながら前歯が無い。
空気が漏れているせいか、話は楽しそうなのですが正確に聞き取るのが実に難しい。
でもまあ何となく面白かったので相槌打ちながらしばらく聞いておりました。

『彼』はニコニコ。
僕も何となくニコニコ。
不思議と雰囲気は悪くない。妙なものですがちょっぴり楽しくすらありました。

しかしこの蜜月も唐突に終わりを告げます。
『・・・なんだよね。ねぇ、めぐんでよ
ああ、物乞いか。そうかそうか。そうだったか。
僕の視線は自ずと下がり、頬は弛緩して笑顔が消えました。
「そうですか。じゃあね」
物乞いに用はありません。僕はその場を去りました。

『彼』の話は面白かったし楽しいひとときを過ごしたのだから
少しくらい恵んでもよかったのかな、と思わないこともありません。
ただ、ここで幾ばくかのお金を『彼』に恵んでやっても何にもなりません。
千円なら飯を食えば終わり、1万円ならそこに酒がつく程度でこれもすぐ消える。
いくら恵んだとしても『彼』の何が変わるわけでもありませんし、
そもそも『彼』は野外生活の窮地を脱したいなどとは露ほども思っていないでしょう。
いいオッサンの割には妙につやのある肌、あまりにも屈託の無い笑顔。
『彼』は物乞いという生活に妙な明るさをまといつつ染まっていました。
そういう生き方もあるということ、それが『彼』の選択なのでしょう。

季節の変わり目、気温の上下も激しく気候も安定しない今日この頃。
僕には何の手助けも出来ないけど『彼』がとりあえず元気でいてくれたらいいな、と。
それだけを、ほんのちょっぴり、思います。

5年前に遭ったインドの物乞いは人の服引っ張って「1ルピー1ルピー」。
肘から先の無い腕を突き出して「哀れに思うだろ!金よこせ!」。
あまりにも驚き、怖くなって走って逃げたけど(恵んであげませんでした)、
今思い出してもあのどぎついアピールは凄かった。
そしてそんなのをやり過ごすうちに3日で慣れてしまったのは我ながらもっと凄かった。
慣れるものだなあ・・・ってね。

by urutimai1970 | 2006-10-03 10:07 | 徒然