1-1。同点では連勝にはならない。
後半も終盤、ザスパは攻勢を保ち続けるも勝ち越し点が生まれない。
右から左からクロスが上がる、突破を図って深々と抉る、
ペナルティエリア付近からフリーキックの機会も得るものの
ゴールを割ることだけができない。どうしても叶わない。
前半はこれぞ松下といった鮮やかなミドルシュートで先制。
水戸の早め早めの守備の厳しさにボールをうまく運べず苦しみ、
流れが悪い中で生まれた一発だっただけに「これは…」と思った。
ただ、期待に膨らみ湧いてくる「これは…」を超える思いを懸命に振り払う。
まだ前半、試合はまだ続く。
試合終了の笛を聴くまでは何が起こるかわからない。何だって起きる。
まだまだだ。気を引き締めて。ガラガラだったB-Hはいつしかサポでびっしり。
「初めて」に向かって意気盛ん。闘志をピッチへ、勢いは加速する。
しかし前半の勢いは僅かに水戸にあった。
中盤での秋葉のパスミスを攫って速い攻め、何度も見せ付けられた水戸の「形」。
同点ゴールを浴びて1-1。でも前半、チャンスは来る。必ず来る。
諦めない、勝利を渇望するスタジアムを「いい湯だな」がゆる~く包み込む。
ハーフタイムのあのゆる~い感じは、あれはあれで悪くはないけどね。
後半ロスタイム。審判の笛にビクビクと過剰に反応する自分がいた。
試合終了か?いやファウルだ。まだあるぞ。
まだ1-1。これで終わるわけにはいかないのだ。
いま終わるか、まだ終わるな。
後半35分過ぎから脚ががくがくと震えだす。動悸がして苦しくてたまらぬ。
今から振り返ると、ちょっと異常な興奮状態にあったということなのか。
脚が震えて跳べない。動悸に思わず胸を押さえつける。
それでも声だけは、声だけは、と振り絞る。
しかし、もっと懸命な、必至な男たちがピッチにいた。
「初めて」に向けて、執念はラストプレーで結実する。
松下が放ったシュートは水戸の選手の背後を抜けてネットを揺らした。
あとのことは、喜びすぎてあまり覚えていない。
脚が信じられないほど震えていたこと、涙がこぼれそうになったこと、
なによりも嬉しかったこと。
今季初のホームゲーム勝利と、J参入3季3ヶ月でやっと掴んだ「連勝」。
あんなに嬉しいことって、あるんですね。
選手たちが挨拶に来た。歓喜の交歓。
選手とサポ、サポとサポ。あれほど喜びを分かち合える瞬間があるんですね。
まあ、たいそうな大騒ぎをしてきたのだが、別にタイトルを取ったわけではない。
そういう意味では何を成し遂げたわけでもない。
「連勝しただけ」と言ってしまえば、確かにそれだけのこと。
ただ上に行くために破らなければならない壁を実際に破って見せたのは大きい。
今後に向けて、必至な戦いで白星を連ねた「経験」を得たのだから。
さあ行くぞ!